令和8年(2026年)の設計製図の課題が発表されました。
今年の課題は「ホテル」です。
用途が分かった今、気になるのは「ホテルで何が問われるのか」「まず何から手をつけるべきか」ではないでしょうか。
araこんにちは、一級建築士のaraです。
私は製図試験を5回受験して合格しました。
つまり、5年分の課題発表を経験しています。発表の日に何を読み取り、何から動いたか。その実体験をもとに、今年の「ホテル」の読み解き方をお伝えします。
・令和8年の発表内容(課題名・要求図書・留意事項)
・「ホテル」で問われそうな力を読み解く3つのステップ
・今年の注目点①「既存建築物の現状保存」の想定パターン
・今年の注目点②合否を分ける「法規」への適合
・高さ制限で2回ランクⅣになった私の失敗談
結論からお伝えします。読み解くべきは「ホテル」という用途そのものではなく、その裏にある”今年問われる力”です。
【令和8年】設計製図の課題は「ホテル」に決定
発表された内容を、まず整理しておきましょう。
課題名(用途):ホテル
要求図書:1階平面図・配置図(1/200)/各階平面図(1/200)/断面図(1/200)/面積表/計画の要点等
試験日:2026年10月11日(日)
あわせて公表された「建築物の計画に当たっての留意事項」は、次の6項目です。
- 敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存に配慮する
- バリアフリー、省エネルギー、二酸化炭素排出量削減、セキュリティ等に配慮する
- 各要求室を適切にゾーニングし、明快な動線計画とする
- 建築物全体が構造耐力上安全で、経済性に配慮する
- 構造種別に応じた架構形式・スパン割り・部材寸法を計画する
- 空気調和設備、給排水衛生設備、電気設備、昇降機設備等を適切に計画する
発表で分かったこと・まだ分からないこと
ここで、初受験の方が誤解しやすいポイントをお伝えします。
発表で分かったのは上の3つ(課題名・要求図書・留意事項)までで、当日に配られる詳しい課題文までは分かりません。
具体的な要求室、それぞれの面積、敷地の形や周辺条件。これらは本試験当日(10月11日)に初めて明らかになります。



だからこそ、いま手元にある「ホテル」と「留意事項」から、今年の傾向を読み解いておくことに意味があります。
近年の課題と、今年の「ホテル」の位置づけ
近年の課題(用途)を並べてみます。
| 年度 | 課題(用途) |
| 令和5年(2023) | 図書館 |
| 令和6年(2024) | 大学 |
| 令和7年(2025) | 庁舎 |
| 令和8年(2026) | ホテル |
図書館・大学・庁舎と、公共性の高い施設が続いていました。
今年のホテルは、宿泊という機能を持つ点で、これまでとは性格が異なります。過去問の「型」をそのまま当てはめにくいぶん、用途そのものの理解が問われそうです。
ただし、問われる本質(ゾーニング・動線・法適合・構造・設備)は毎年共通しています。用途が変わっても、勉強の軸まで変える必要はありません。
「ホテル」で問われる力を読み解く3つのステップ
ここからが本題です。発表内容を、次の3ステップで読み解いていきます。
ステップ1|「ホテル」という建物の性質をつかむ
まず考えたいのは、その建物を「誰が・どう使うのか」です。
ホテルでは、宿泊するお客様と、それを支える従業員が同じ建物の中で動きます。
利用者動線(宿泊・食事・くつろぎ)と、管理動線(厨房・配膳・客室清掃・リネン搬送)を分けられるかが、大きなポイントになりそうです。
上層階に客室を積み、下層階にロビーやレストランなどの共用部分を置く構成は、ホテルでは定番です。
階をまたぐ移動が多いぶん、昇降機(エレベーター)の位置と台数の計画も、例年以上に大切になると考えられます。





近年は共用部に複合的な施設(コンビニ、塾、ジムなど)を求められるので冷静に対処が必要です。
ステップ2|今年の留意事項から「評価軸」を拾う
留意事項こそ、出題者が”今年ここを見る“と宣言している部分です。
今年の6項目のうち、私がまず気になったのは次の2つでした。
- 敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存に配慮する
- 空気調和・給排水衛生・電気・昇降機の各設備を適切に計画する
1つ目の「既存建築物」は、今年いちばんの論点になりそうです。この後の章でくわしく掘り下げます。
2つ目は、設備が「空気調和・給排水衛生・電気・昇降機」と具体的に挙げられている点です。
ホテルは客室ごとに水回りと空調を持つため、もともと設備の計画が問われやすい用途です。
図面上のパイプスペースの位置はもちろん、計画の要点等(記述)でも設備への言及がまず求められると見ておきましょう。
残りの4項目も、例年どおり評価の対象です。発表文は一言一句意識しておいてください。
ステップ3|要求図書から「作図量」を見積もる
要求図書は、1階平面図・配置図、各階平面図、断面図(いずれも1/200)、面積表、計画の要点等です。
構成そのものは例年どおりですが、客室が多いぶん、各階平面図の作図量は増えやすいのがホテルの特徴です。
同じような客室を何室も描くことになれば、1室あたりの手間をどれだけ減らせるかが重要です。繰り返し部分を効率よく描く手順を、今のうちに固めておくと安心です。



ただし、代表的なタイプのみ什器を描く指定も考えられます。
▼作図を時間内に描き切る具体的なコツは、こちらにまとめています。


注目点①|「既存建築物の現状保存」をどう想定しておくか
今年の留意事項で、いちばん目を引いたのがこの一文。
敷地の周辺環境や既存建築物の現状保存に配慮する
敷地に元からある建物を、壊さずに残す前提で計画を求められる可能性があります。
更地に自由に建物を置ける計画とは、進め方がまるで変わります。
想定しておきたい「既存建築物との3つの関係」
どんな形で出題されるかは、当日の課題文を見るまで分かりません。
ただ、新しい建物と既存建物の「関係」は、いくつかのパターンに整理できます。頭の中に引き出しを作っておきましょう。
①離して建てる
既存を残したまま、空いた場所に新築を計画します。既存の位置が、新築の形や配置を縛ります
②つないで使う
渡り廊下などで既存と新築を接続し、行き来できるようにします。接続する階と位置の判断が必要です
③既存に役割を与える
既存をホテルの付属施設やエントランス等として活かします。用途と動線の整理が問われます


どのパターンでも共通するのは、既存建物の分だけ、新築を置ける範囲が狭くなるということです。
置ける範囲が狭くなれば、必要な床面積を確保するために建物は上へ伸びます。ここが、次の章の「法規」に直結します。



既存建物は単なる条件ではありません。プランの自由度を奪ってくる、手ごわい条件だと考えておきましょう。
同じ敷地に既存建物が残る場合の注意点
もうひとつ、見落としやすい点があります。
同じ敷地の中に建物が2つ並ぶと、その間にも「延焼のおそれのある部分」が生じる場合があります。
隣地境界線や道路中心線だけを見て安心していると、足元をすくわれます。既存建物との位置関係も、必ず確認してください。
注目点②|合否を分けるのは「法規」への適合
ここが、今年いちばんお伝えしたい部分です。
近年の製図試験では、法規に関する条件を満たしていることが、合格の前提になっています。
設計条件や法令に対して重大な不適合があると判断されれば、図面の完成度に関係なくランクⅣです。エスキスがうまくいっても、きれいに描き上げても、そこで終わってしまいます。
【実体験】私は高さ制限で2回ランクⅣになりました
これは、私自身が痛いほど味わったことです。
令和3年(集合住宅)と令和6年(大学)、私は2回とも高さ制限との干渉でランクⅣになりました。
同じ場所で、2度同じミスをしたことになります。
エスキスはできて、図面も描き上げていました。それでも、高さが制限を超えていた一点で不合格です。


今年のホテルは、客室を積み上げて階数が伸びやすい用途です。そこに既存建築物という制約が加われば、建物はさらに制限が厳しくなります。
私と同じ失敗をしないよう、高さの検討は要注意してください。
図面に必ず反映したい法規のチェック項目
製図試験でくり返し問われてきた法規を、チェックリストの形にまとめます。
□ 建蔽率・容積率は指定の範囲内か
□ 道路斜線などの高さ制限に触れていないか
□ 延焼のおそれのある部分を正しく拾えているか
□ 防火区画(特に階段やエレベーターの竪穴)を落としていないか
□ 避難経路の歩行距離・重複距離は基準内か
□ 敷地内通路の幅は確保できているか
ホテルの場合、客室が並ぶ階の避難計画は特に注意したいところです。
行き止まりの廊下を作っていないか。二方向に逃げられるか。客室の奥から階段までの距離は足りているか。基準階を描くときに、毎回セットで確認する習慣をつけておきましょう。
「ホテルらしい計画かどうか」より、「法規と留意事項を正確に守れているか」のほうが、合否には直結します。
▼「重大な不適合」でランクⅣになる基準は、こちらで詳しく解説しています。


▼当日のミスを防ぐチェックリストは、こちらにまとめています。


【5回受験の実体験】課題発表の日に、私がやっていたこと
ここからは、私が課題発表の後に実際にやっていたことをお話しします。
まず私がやっていたのは、資格学校から配られた資料にじっくり目を通すことでした。
課題が発表されると、その用途の参考プランや解説資料が配られます。
いきなり手を動かすのではなく、そこに載っているプランを見て、その用途の「型」を頭に入れることを優先していました。今年で言えば、ホテルの基準階(客室が並ぶ階)の作り方を、いくつも見ておくイメージです。
次にエスキスの手順を、その用途に合わせて一度なぞってみました。
手順そのものは毎年同じでも、用途が変われば「どこで悩むか」が変わります。悩みどころを先に知っておくと、本番で固まらずに済みます。
本試験までの残り時間は、思っているより短いです。発表直後に方向性を固めておくと、その後の学習が一気に進みます。



5回受験して分かったのは、発表日の初動の早さが本番の完成度を左右する大きなポイントだということでした。
▼エスキスの本質については、こちらの記事で詳しく解説しています。


よくある質問(FAQ)
- 令和8年の課題は何ですか?
-
「ホテル」です。2026年7月24日(金)に建築技術教育普及センターから発表されました。本試験は2026年10月11日(日)に行われます。
- 発表で、当日の課題文の内容まで分かりますか?
-
分かりません。発表されたのは課題名(ホテル)・要求図書・留意事項の3つです。具体的な要求室や敷地条件は、本試験当日に配られる課題文で初めて明らかになります。
- 「既存建築物の現状保存」とは、どういう意味ですか?
-
敷地にすでにある建物を壊さず、残したまま計画することを指します。新築を離して建てる、渡り廊下でつなぐ、既存に別の役割を持たせるなど、いくつかの想定を準備しておくと安心です。
- 法規のミスは、どのくらい合否に影響しますか?
-
法令への重大な不適合と判断されると、図面の完成度に関わらずランクⅣになります。私自身、高さ制限との干渉で2回ランクⅣを経験しました。法規は最後の見直しではなく、エスキスの最初に確認してください。
- 独学でもホテルの課題に対応できますか?
-
対応は可能ですが、留意事項の読み解きと最新の採点傾向は、資格学校の情報も参考にすると精度が上がります。発表後の各校の無料ガイダンスは、独学の方も活用する価値があります。
まとめ:課題発表は「用途を知る日」ではなく「準備を始める日」
今年の課題は「ホテル」に決まりました。用途を知って一喜一憂している時間はありません。
- 令和8年の課題は「ホテル」。本試験は10月11日(日)
- 分かったのは課題名・要求図書・留意事項の3つ。要求室や敷地は当日まで分からない
- 利用者と管理の動線分離、昇降機、客室の水回りがホテルの読みどころ
- 「既存建築物の現状保存」は、新築を置ける範囲を狭める手ごわい条件
- 法令への重大な不適合は一発でランクⅣ。高さ制限は要確認
発表から本試験までは約2ヶ月半。ここからの動き方で、当日の完成度が変わります。
▼製図道具の準備がまだの方は、こちらもあわせて参考にしてください。







最後までお読みいただき、ありがとうございました!
みなさまの合格を応援しております。




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