一級建築士のエスキスとは?5回目で合格した筆者の3つの本質

・エスキスが時間内にまとまらない

・作図中に想定外の問題が発生してパニックになる

・そもそもエスキスを始めるのが苦痛……

受験生の皆さん、こんな悩みを抱えていませんか?

ara

一級建築士のaraです。私は製図試験を5回受験し、5回目でようやく合格できました。

実は私も以前はエスキスが本当に苦手で、試験のたびに「どうすれば合格ラインに届くんだ」と頭を抱えていました。

しかし、5回の製図試験を経験してたどり着いた答えは、「シンプルなエスキスこそが、最強の武器である」ということです。1年目の自分にもっと早く伝えたかった、合格への近道です。

この記事を読めば、エスキスへの苦手意識が消え、チェック時間に余裕が持てるようになります。

合格への最短ルートを一緒に確認していきましょう。

私が5回受験を経て一級建築士に合格するまでの全工程は、こちらにまとめています。

目次

シンプルなエスキスとは何か?

エスキスの流れは、どの資格学校でもおおむね同じです。

  1. 敷地条件の整理
  2. 高さ・へりあき検討
  3. ボリューム・階振り分け
  4. バイコマ検討(ゾーニング)
  5. 1/400検討(プランニング)

言葉にすると簡単ですが、この検討が2時間で終わる人と、4時間かけてもまとまらない人がいます。作図がどれほど速くても、エスキスが破綻すれば合格は遠のく……それが製図試験の厳しさです。

私が5回の受験で確信したのは、「凝ったプランを捨て、シンプルな思考に徹すること」が合格への一番の近道だということです。

「シンプルなエスキス」とは、奇をてらった解法をせず、どの問題にも通用する汎用性の高いルールを徹底すること。具体的には「3つの定石を守る」+「2つの罠を避ける」の合計5つを意識することです。

シンプルなエスキスが「最強」である3つの理由

理由① エスキス時間が短縮できる

汎用性の高いルールに従えば、毎回ゼロから考える必要がなくなり、エスキス完成までの時間が安定して短縮できます。

理由② 作図のミスが激減する

プランがシンプルだと、作図中の柱位置の取り違えやエスキスの読み違いが起こりにくく、作図スピード・精度ともに向上します。

理由③ チェック時間に余裕が生まれる

エスキスと作図が早く終われば、その分チェック時間に充てられます。「重大なミス」を試験中に発見・修正できれば合格にぐっと近づきます。

製図試験で「重大なミス」をゼロにするチェック手法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

守るべき「3つの定石」

まずは「これをやれば失敗しにくい」3つの定石です。

定石①|コア位置はメイン出入口の近くに、廊下は「直線」で

階段とエレベーター(コア)の位置は、計画の成否を分けます。下記のコア位置について、1Fはどちらの方が計画しやすいでしょうか?

コア位置②(1F) メイン出入口から離れた位置にコアを配置した1階平面図の例

△ コア位置①(1F):1F単体では可

コア位置①(1F) メイン出入口近くにコアを配置した1階平面図の例

○ コア位置②(1F):メイン出入口近く・推奨

1F単体ではどちらも計画は可能ですが、コア位置①(1F)のほうがメイン出入口からの動線が短く、エントランス空間が整形に取れます

では、同じコア配置で2Fの平面配置を見てみましょう。

コア位置②(2F) コア②パターンの2階平面図の例

× コア位置①(2F):プランが破綻しやすい

コア位置①(2F) コア①パターンの2階平面図の例

○ コア位置②(2F):多くの人が選ぶ・推奨

※ 2Fにはどちらもメイン出入口上に吹き抜けを設けています。

両者を比較したとき、おそらく多くの人がコア位置①(2F)と答えるはずです。なぜこちらの方が計画しやすいのか、ポイントは2つあります。

メインコアと管理コアを繋ぐ動線が直線であること

2Fホールがコンパクトで、居室の面積を効率よく確保できること

エスキスを進める際、いかに簡単に効率よく計画できるかでエスキス時間が変わります。「コアは出入口の近く、廊下は直線」を意識しておくと、どの課題でも安定して計画が進みます。

定石②|建物へのアプローチは「長辺入り(平入り)」を基本にする

用語解説:「平入り」=建物の長辺側からアプローチする方式/「妻入り」=短辺側からアプローチする方式。

令和6年の標準解答例 妻側アプローチの平面図

※ 令和6年の標準解答例(妻入り)

これは令和6年の標準解答例ですが、建物へのアプローチは道路に面する妻側からとなっています。標準解答例は合格レベルの受験生の平均的な解答例なので、多くの方は妻側アプローチで考えたのでしょう。

ですが妻側から敷地に入ったとしても、「平入り(長辺)」で考える癖をつけましょう。なぜなら平入りにすると、1Fの廊下やホールをコンパクトにまとめやすく、要求室の配置が格段に楽になります。

敷地内を通って平入りで建物にアプローチする推奨計画の平面図

○ 平入り計画:推奨(要求室の配置が楽になる)

ara

私が受講していたTACの製図クラスでも、多くの人が妻入りではなく平入りで計画していましたが、問題なく合格していました。

平入りなら、いつも通りのコア位置・計画で進められるので、課題条件に左右されない汎用性の高い手法です。へりあきが3m以上とれる問題であれば、敷地内を通って平入りで建物にアプローチする計画をおすすめします。

定石③|管理動線と利用者動線は分けて考える

ゾーニングや動線は、指定がなくても分けて考えたほうがよいです。例えば図書館で、図書の搬入ルートと利用者の動線が交錯した場合、それだけで大幅な減点となります。

TACの講師見解では、図書搬入と利用者動線の交錯はランクⅢ相当とされるケースもあります。動線の交錯は致命的なミスとして扱われやすいので注意しましょう。

またセキュリティの観点からも、指定があれば減点対象となるので、普段から動線を分ける癖をつけておくべきです。

令和7年の標準解答例 来庁者と職員のセキュリティを踏まえた動線計画の平面図

※ 令和7年の標準解答例:動線分離の事例

上記は令和7年の標準解答例です。課題文で『来庁者と職員・議員等とのセキュリティを踏まえた動線計画』と指定があったので、マーキング箇所に扉を設けて動線を分けています。

動線やゾーニングを分けるのは慣れていないと難しく感じますが、普段から意識していればそれほど難しくありません。いざ指定された時にもいつも通り対処できるのでおすすめです。問題の難易度が非常に高く、セキュリティの指定がない場合は、多少崩して対応すれば問題ありません。

避けるべき「2つの罠」

続いて、エスキスを複雑にしてしまう「やってはいけない」2つの罠です。

罠①|吹き抜けは「外壁面(壁際)」に寄せる

吹抜け指定が求められることはよくありますが、吹抜けの位置によってエスキスの難易度は大きく変わります。建物中央に吹抜けを設けた場合と、壁際に設けた場合を比較してみましょう。

× 中央配置(1スパン):居室が吹抜けに圧迫されて計画しづらい

吹き抜けを建物中央に1スパンで配置した平面図

○ 壁際配置(1スパン):採光が取りやすく計画しやすい

外壁面に吹抜けを設けた方が、採光も取りやすくプランを崩さずに済みます。建物中央に吹抜けを設けると、居室が吹抜けに圧迫されて計画しづらくなります。

では、吹き抜けが2スパンと大きかった場合はどうでしょうか?

吹き抜けを建物中央に2スパンで配置した平面図

× 中央配置(2スパン):プランニングの難易度が跳ね上がる

吹き抜けを外壁面(壁際)に2スパンで配置した平面図

○ 壁際配置(2スパン):大きな吹抜けでも計画しやすい

吹抜けが大きくなるほど、中央配置の難易度は跳ね上がります。明らかに計画しやすいので、吹き抜けは壁際に設けましょう。

罠②|PC梁は諸刃の剣。指示がなければ使わない

用語解説:「PC梁」=プレストレストコンクリート梁。柱なしで大スパンを飛ばせるため計画の自由度が高い。「丘柱」=梁の上に乗ってしまった構造的に成立しない柱のこと。

柱をなくし、スパンを飛ばすことができるPC梁は計画上とても便利です。ですが、PC梁上に柱を計画する「丘柱」などのミスを誘発しやすく、一発失格のリスク(諸刃の剣)があります。

上の写真では、下階でPC梁で飛ばしている箇所の上に屋上庭園がある場合で、意外とこのミスをしてしまう人は多いです。

【実例】私が総合資格学院に通っていた頃、クラスメイトの中にPC梁の上に柱を描いてしまい(丘柱)一発失格になった方がいました。せっかく1年間努力してきても、たった1本の柱で合格を逃すことになります。それくらい怖いミスです。

また、PC梁は梁せいが大きいので、天井懐を確保するため階高を大きくする必要が出てきます。高さ制限がキツくなることもあるため、任意でのPC梁使用は避けた方が無難です。

課題文で明確に指示がある場合のみ使用し、自分の判断で「便利だから」と使うのは絶対に避けましょう。

最強の思考を手に入れるための「訓練法」3つ

本試験では、難解なパズルを解く能力は求められていません。新しい課題の表現や、受験生を惑わせる想定外の出題で、失格やミスリードを誘発させるようなことが多いのが実情です。

大切なのは、「基本課題を確実に、シンプルに解き切る力」です。そのための練習法を3つお伝えします。

訓練①|スパンを変えて、同じ問題を「解き直す」

一度解いた課題を、今度は別のスパン割りで解いてみてください。作図はせず、1/400のエスキスまででOKです。同じ条件でも別のパターンを試すことで、エスキスの「引き出し」が爆発的に増えます。

ara

エスキスに苦手意識があった私にとって、この訓練法は本当に効果的でした。

訓練②|あえて「妻入り」などの難しいパターンを試す

前述したように建物へのアプローチは基本は「平入り」ですが、練習ではあえて「妻入り」で解いてみましょう。あえて解きづらい状況を経験することで、以下のメリットがあります。

・プランニングの柔軟性が養われる

・本試験での想定外の出題にも動じなくなる

訓練③|エスキスの各段階の時間を記録する

エスキスの各段階において、人それぞれ苦手な箇所や無駄な検討があります。自分が「どの段階で迷っているか」を可視化してください。

  1. 敷地条件の整理
  2. 高さ・へりあき検討
  3. ボリューム・階振り分け
  4. バイコマ検討(ゾーニング)
  5. 1/400検討(プランニング)

「階振り分けに時間がかかっているのか」「バイコマ検討に時間がかかっているのか」── 弱点がわかれば、対策はシンプルになります。各段階ごとの時間を常に意識しながら、1/400完成まで2時間で終わることを目標に、時間管理を徹底しましょう。

シンプルなエスキスは「作図」を楽にする

エスキスがシンプルであることのメリットは、問題が解きやすくなるだけではありません。エスキスがシンプルだと作図が格段に楽になります。

複雑なプランを一生懸命ひねり出しても、作図中に柱位置を間違えたり、エスキス用紙を何度も見返して時間をロスしたりしては本末転倒です。

一級建築士試験は設計コンペではありません。「与えられた条件を、ミスなく、最低限満たしているもの」を提出すれば合格できる試験です。

シンプルであればあるほど、ミスは減り、完成度は上がります。

まとめ:エスキスのシンプル化は合格への最短ルート

製図試験を5回受験した私がたどり着いた答えを、最後に整理します。

・シンプルなエスキスが課題を易しくし、合格を引き寄せる

・3つの定石(コア位置/平入り/動線分離)を守る

・2つの罠(吹抜け中央配置/任意のPC梁使用)を避ける

・3つの訓練法(解き直し/妻入り練習/時間記録)で精度を上げる

・エスキスの簡略化は、作図のスピードアップに直結する

この記事が、あなたの受験勉強の突破口になれば幸いです。次のステップとして、製図試験のチェック手法・学科対策・私の合格までの軌跡もぜひご覧ください。

ara

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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この記事を書いた人

ゼネコンの現場管理を8年経験後、他社のゼネコン内勤に転職。
保有資格は一級建築士、一級施工管理技士

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